「人力で持ち上げていいのって何kgまで?」「より安全に運搬する方法ってある?」

工場内で必ず発生する重い物の持ち上げや運搬。
毎日発生する作業だからこそ、対策が後回しになってしまいがちですよね。

そこで今回は

  • 人が持ち上げていい重量
  • 持ち上げのコツ
  • 運搬でケガ人を出さないための対策
をご紹介します!

重量物の取り扱いに最適な機器 も紹介するので、自動化/省力化を検討中の方はぜひお役立てください。

人が持ち上げていい重さは法律で決まっている

以下の法律に重量に関する記載があります。

  • 労働基準法
  • 女性労働基準規則
  • 年少者労働基準規則

性別や作業時間によって上限が異なるんです。 ここからは性別ごとに細かく見ていきます。

男性◆18歳以上は制限なし
断続作業 継続作業
〜満15歳 15kgまで 10kgまで
満16歳〜満17歳 30kgまで 20kgまで
満18歳〜 決まっていない 決まっていない

(参考:年少者労働基準規則/厚生労働省


上限は断続作業か、継続作業かによって決まります。
それぞれの違いは以下です。

  • 断続作業:同じ作業が長時間継続しない(例:トラックへの積み込み後、しばらく運転する)
  • 継続作業:同じ作業が継続する(例:トラックへの積み込み後、別の積み込み作業を行う)

なお18歳以上は法律で上限が定められていません。

ただし重量を作業者の体重の40%以下にとどめるように推奨されています。
(参考:職場における腰痛予防対策指針/作業態様別の対策1-Ⅱ-(2)/厚生労働省/​​平成25年6月18日


女性◆最大30kgまで
断続作業 継続作業
〜満15歳 12kgまで 8kgまで
満16歳〜満17歳 25kgまで 15kgまで
満18歳〜 30kgまで 20kgまで

(参考:女性労働基準規則/厚生労働省


なお18歳以上の女性については、男性が取り扱える重量の60%にとどめるようにも推奨されています。

ただし重量を作業者の体重の40%以下にとどめるように推奨されています。
(参考:職場における腰痛予防対策指針/作業態様別の対策1-Ⅱ-(2)/厚生労働省/​​平成25年6月18日


妊娠中の女性◆運搬は禁止

妊娠中および産後1年たっていない女性は重量物の取り扱いが禁止されています。
(参考:労働基準法/第64条の3/厚生労働省


重量のほかに有害ガスが発生する現場での作業なども禁止されているため、注意が必要です。


制限を超えたら◆2人以上で運ぶ

重量が制限を超えてしまった場合、2人以上で運ぶことになります。
その際

  • 身長差の少ないスタッフを割り当てること
  • 重量が各スタッフに均一にかかること

が重要です!

(参考:職場における腰痛予防対策指針/作業態様別の対策1-Ⅱ-(3)/厚生労働省/​​平成25年6月18日


楽に重量物を運ぶコツ7つ

法律を守っていても、作業の進め方次第ではケガをすることがあります。

そこでここからは重量物の持ち上げ運搬安全に行うためのコツを7つご紹介します!

1、重心を低くする

中腰で物を持ち上げると負荷は2倍以上だと言われます。

(参考:どうして腰痛になるの?/福島産業保健総合支援センター

  • 股関節や膝関節も曲げる
  • 片ひざをつくようにして腰を落とす
  • その時に目線は前に向ける

このように重心を低くすると椎間板を圧縮する力が減り、腰への負担が少なくなります。

2、資材と自分の距離を近くする

材料は体から離れるほど重く感じます。

さきほど説明位した重心を低くすることで物との距離を近づきます。

そのまま体全体でという意識で抱え込むように体に寄せます。

3、腰を曲げない
  • 背中が曲っている
  • 体が傾いている

このような状態では身体にバランスよく力を入れることができません。膝と腰の力を使って真上にあがるイメージで立ち上がりましょう。

腰を丸めた状態は椎間板への負担が非常に大きくヘルニアなど腰の故障に繋がります。

(参考:職場における腰痛予防対策指針/作業態様別の対策Ⅱ/厚生労働省

4、体幹に力をいれる

体幹筋肉を使いお腹をへこませるように力を入れます。

そうすることで腹圧が高まり腰椎がより安定。

体がぶれないようにするために日頃から背中の真ん中あたりの筋肉を鍛えるとよいでしょう。

脚の力で立ち上がる動作と同時にダンボールを持ち上げることで、身体にかかる負担を分散。
太ももの筋肉ははとくに強いので、この筋肉を使って上がるイメージで持ち上げると思った以上に重たい物も持ち上げることができます。

6、手の中心に荷物の角を当てる

荷物の角部分を持って指を使うのも重要なポイント。
指の力を入れると手のひらの中央に荷物が安定し、より安全に運べます。
運搬すると腕の負担も軽減にも。

7、荷物の重心をへそ近くに

人の体の重心は、立っている時はへそあたりになります。
体の重心とダンボール箱の重心が近いほど軽く感じるので、 ダンボールの底がおへその位置へ来るように調整することがコツです。

ケガ人が発生したらどうなる?

重量物を運んだ社員が腰痛になった場合、労災認定となる場合も。
ここでは労災となった事例を2つご紹介します。

突発的に生じた腰痛

負傷の原因が明らかに仕事中に突発的に生じた出来事である場合、労災が認められるケースが。
ここでは労災となった事例を2つご紹介します。

<背景>

  • 会社倉庫が狭い
  • 荷物の重さは約10kg

<出来事>

  • 無理な姿勢で荷物を持ち上げた瞬間、腰に激しい痛み。
  • 病院に搬送され、腰部捻挫の診断を受けた。

(参考:腰痛の労災認定/厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署

長期的な作業で生じた腰痛

長期にわたった負担でも、負傷の原因と判定される場合があります。

<背景>

  • 電柱に登って電気工事をする現場
  • 腰部に負荷がかかる姿勢のままの作業が毎日3時間ほどあった

<出来事>

3年ほど従事した後に腰痛が発生。
医師から筋・筋膜性腰痛と診断を受けた。

(参考:腰痛の労災認定/厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署

重量物の運搬によるケガ人を防ぐには?

ケガ人を防ぐために、あらかじめできる対策を6つほどお伝えします。

1、通路をふさがない

荷物を運ぶ通路に

  • 段差
  • 台車や商品の放置
  • むきだしのコード

などはありませんか?


「すぐ使うから」
とつい放置しがちですが、それが大ケガにつながってしまうことも。

2、階段の照明を絶やさない

暗くて足場が見えないことも事故につながります。
特に階段は要注意。
なれていても踏み外す可能性があります。

3、床がすべらないようにする

はもちろんのこと、もすべって転倒する危険性を高めます。 床をぬらしてしまったらすぐ掃除しましょう。
掃除用具を取り出しやすいところに用意すると、掃除忘れが減ります。

どうしても水や油が発生してしまう場合、注意書きを忘れずに。

4、脚立は正しく使う

脚立を乗り降りするときには重量物を持たないようにしましょう。
また登ったときには天板で体を支えます。

開き止めがロックされていない状態で使用したり、天板に乗った状態で作業したりしないでください。

厚生労働省からチェックリストも配布されています。
いま一度、正しい使い方を確認してみるのもオススメです。

(参考:はしごや脚立からの墜落・転落災害をなくしましょう!/厚生労働省 東京労働局

5、台車は正しく使う

台車は保管場所を決め、通路などに放置しないようにします。
また使用時には車輪に巻き込まれるようなものを身につけていないかチェックが必要です。

6、作業スペースを確保する

「毎日忙しくて資材を放置しっぱなし」
ということも多いのではないでしょうか?

作業スペースが狭いと、無理な姿勢での作業が増えます。
無理な姿勢で長時間作業したり、重いものを持ち上げようとするとケガにつながるんです。

工場内のものは保管場所を決め、
こまめな整理を心がけます。

ケガ防止に効果的な省力化機器3選

運搬の省力化には

  • 台車
  • リフト
  • コンベヤ
  • クレーン

など様々なツールがあります。


なかでも おすすめの機器を3つご紹介。

1、自然な操作感で楽に搬送◆電空バランサー

遠藤工業では新世代の電空バランサーまじかるくんを販売中です。重量物の搬送や組立作業時の位置決め、等の作業に最適です。

まじかるくんにはこんな特徴が。

  • ワークを直接触っての昇降操作
  • グリップ操作からワーク操作へのスムーズな切り替え
  • ワークの重さが変わっても操作感は変わらず

これらの特徴で、バランサーを導入してもすぐに操作感になじむことができます。

動力には圧縮エアと100V電源が必要です。
給気圧力(MPa)   :0.4~0.7
電源          :電圧AC100V 2極プラグ+アース
吊り上げ荷重(Kg)  :0~130kg
型式          :EDB-50,EDB-85,EDB-130

2、電気の使用が制限される環境でも活躍!◆エアホイスト

チェーンやワイヤを巻き上げてワークを昇降させるホイスト。 なかでもエアホイストは動力に電気を使わないため、 火花や発熱のリスクが低く電気の使用が 制限される環境での使用に適しています。

エア配管をするだけで使用できるため、導入もスムーズです。
※配管の近くにフィルタ・レギュレータ・ルブリゲータを設置してください。

3、精密な位置決め作業が可能◆サーボバランサー

昇降操作によりワークの高さ位置を精密に調整できるサーボバランサー。
遠藤工業のサーボバランサーは300kgまで搬送可能です。

ワークを触っての操作とグリップ操作できるため、スムーズな運搬ができます。
重量物の搬送や組付け等の作業に最適です。

動力には200V電源が必要です。
電源          :単相200V もしくは 三相 200/220V
吊り上げ荷重(Kg)  :0~300kg
型式          :ESB-300

まとめ

重量物の持ち上げは法律で上限が決められています。

18歳以上の場合

  • 男性は体重の40%以下
  • 女性は男性が取り扱える重さの60%以下
  • 妊婦および産後1年は重量物の取り扱い禁止
といった法律や指針もあるため注意しましょう。

正しい運び方を知ればケガを未然に防ぐこともできます。

ですが人力には上限があるため、必要に応じて機器の導入を検討してみてください。